長谷部国重の刀

博物館の展示ケースでしか見たことのないような、刀剣史に残るような有名な刀であったとしても、タイミングさえ合えば購入することは可能です。名刀と呼ばれる刀を自ら所持する幸福は、何物にも代えがたいでしょう。もちろん名刀と呼ばれるものですので、かなりの高額です。値段の問題は大きいですが、逆に言えば「お金さえ払えば購入できる」刀であるということです。それだけでもロマンがあると言えるでしょう。購入できる刀のひとつとして、長谷部国重という銘の脇指があります。南北朝時代中期の鍛冶で、現在は国宝とされている「へしきり長谷部」の作者である国重の子です。「へしきり」というのは、織田信長が意に背いた茶坊主を、棚ごと圧し切ったという逸話を持っているため、その切れ味から名付けられた刀です。国重には、上杉景勝の遺愛の刀である、唐柏という号を持つ太刀があります。雄大な反りがついている「皆焼の刃文の唐柏」でありますが、自らも刃味優れた刀を好んだという景勝の武将像をよく映し出している刀と言われています。この長谷部国重の脇指は、身幅が非常に広く、重ねは薄く、反りは浅い。豪快にして鋭利な造りである大平造を採用しています。地金がモクモクとしていて力強く、焼高い目の刃文は刃の縁によくついて皆焼風になっており、明るく冴えた印象を与えています。表裏に刻まれた龍の彫が刀身に覇気が加わっていることが分かります。船底型の茎には、1363年(貞治2年紀)と刻まれており、相州伝(正宗を始祖としている相模鍛冶に顕著に表れている鍛法の手法で、5箇伝の一種)の典型的な作風が表されているために非常に品格が高いと言われており、これは同作中の逸品と言われています。