貧しい武士と日本刀

江戸時代、下級武士でも代々受付継がれてきた日本刀を持つ者はいた。ただ、新 しいものを買うとなると、古物商で安価な質流れの刀を買ったり、それさえ買うお金もないは貧しい武士は、刀の代わりに併を削って刀のように見せた、いわゆる「件光」を持っていた。
左利きの武士は、右腰に日本刀を差していた。江戸時代の武士の慣習を考えると、左腰に差すのが常識で、いくら左利きでも右腰に差すとは考えにくい。右腰に差していると、道でどこかの武士とすれ違ったときに、鞘がぶつかってしまう。輸を当てるのは喧嘩を売るようなもので、武士 の世界ではご法度とされていた。またそのころは、「左利きは家が懐く」とされ、子供のころから矯正されていた。こうしたことから、江戸時代の武士は皆、左腰に日本刀を差していたと考えられる。