刃文

刀身に施される刃文は、刀装に付けられる彫刻、象嵌とは質の異なるものでした。単なるデコレーションではなく、刀匠の精神、魂が込められたものでした。日本刀は正に芸術作品として評価されることになったのですが、正当に評価したのは高位の武士だけではありませんでした。

何と海外でもその仕事を称える声が聞かれるようになったのです。例えば織田信長が黒田官兵衛に授けた名刀に関して、面白い逸話が伝えられています。

無礼な茶坊主に斬りつけた際、棚と一緒に斬り捨てたというのです。事実かどうかは分かりませんが、当時の日本刀の切れ味を物語っています。

また本田平八郎忠勝が所有した蜻蛉切についても、恐ろしい切れ味が伝説となっています。近代以降もこうした伝説は広がり、ドイツでは日本刀の研究が進められました。そこで実施された成分分析は、西洋の大砲製造に活かされたと言われています。

刃文は何故日本刀において重要な位置を占めるようになったのでしょうか。日本刀の特徴と言えば反りと鎬造です。

外周の刃を造るためには、適度に反らしながら、刀身を削ぎ落とす技術を要します。この独特の製法によって、日本刀は軽量でありながら強く、振り回しやすい剣となります。

断面は六角形となっていますから、強度も高く、簡単には壊れません。この強度が日本刀のアイデンティティの一翼を形成し、その表象として発現したのが刃文でした。

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